トライの原動力は釜石愛

「先日、“歩く郷土愛”って言われたんです」と笑いながら語った小松野麻実さんは、就職を機に戻って来たＵターン組。中学2年生で東日本大震災を経験し、通っていた学校が避難所になった。「家族だけでなく地域全体に育てられた」という思いもあり、地域の人々が避難所で暮らす様子に「釜石のために何かやらなくては」と強く感じた。当初は釜石でずっと暮らしたいと考えていたが、大学進学のために上京。東京での大学生活を「岩手三昧でした」と振り返るとおり、岩手関連のイベントに積極的に参加した。復興庁主催の復興・創生インターンで、釜石の復興のために尽力してきた大人たちと出会い「一緒に活動していきたい」と感じたという。その後、株式会社かまいしDMCに就職が決まり帰郷。新たな釜石ライフが始まった。職場ではイベント運営などを精力的にこなす一方で、川での体験活動の資格「RAC」を取得し努力を欠かさない。多忙な日々のなかで、知り合いとお酒を酌み交わすのが至福の時間。職場以外の横のつながりができ、「人生の先輩たちと呑むのが大好きです」と楽しそうに語る様子に、地域から可愛がられる小松野さんの姿が垣間見えた。今後も「日々トライしたい」と意欲を見せた。

釜石の人と人を繋ぎたい

釜石市役所で「釜石」を背負い業務に励む、猪又敬大さん。幼稚園から中学校までは小松野さんと同じ学校に通っていたが高校進学で盛岡へ。その後東京の大学に進学した。釜石に帰るつもりはなかったが、家族の勧めもあって釜石市役所に就職。社会人2年目を迎えた。震災前後の釜石の変化について問われると「まちなかの復興が進んで新しい建物が建ちましたが、それはあくまでもハード面の話。元々住んでいた人や若者が減るなど、人と人とのつながりが希薄になり寂しいです」と冷静に考える。普段は商工業の支援業務や外回りに動き回っている。休日は「趣味の野球をしたり、地元の友達と飲み会をしたりするのが楽しい」と笑顔を見せた。地元の同世代の人たちと話していると「みんなはっきりとは言わないけれど、釜石に愛着があるんだろうなと感じる」。今後は市役所職員という立場を生かし、そんな人々を繋ぐ役割を担っていきたいと考えている。これからの釜石を「家族が住みやすい街、一回出ても戻ってきやすい街にしたい」という言葉には、隣で聞いていた小松野さんも頷いた。「公務員＝カタい、というイメージをこわしたいですね」とまっすぐに語る猪又さんのトライはこれからも続く。